子どもの病気
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夏風邪について
一般的に咳、鼻水などの症状がある場合を風邪と言いますが、夏風邪は高熱、咽頭痛、発疹、腹痛、下痢、結膜炎が特徴です。
また、夏風邪のウイルスは、時には頭の中まで入っていって無菌性髄膜炎を発症します。
主な症状としては発熱+頭痛+嘔吐の3つがありますが、それに加えて項部硬直と言って首が痛くて曲げることができない徴候を認めます。
発症した場合はほとんどが入院となります。
また、まれではありますが、命にかかわる重篤な脳炎、心筋炎、肺炎なども発症することがあります。夏風邪の治療は対症療法です。十分な水分摂取、栄養補給と安静が大切です。また、必要に応じて解熱鎮痛剤を使用します。
感染経路は咳、くしゃみなどでの飛沫感染、ウイルスが付いた物を触って、その手が口に入った場合などの接触感染、さらに、ウイルスは便から数週間排泄されますので、そのための糞口感染などです。
伝染性膿痂疹(とびひ)について
とびひは、主に夏になると小児がかかる皮膚の細菌感染症です。
起因菌としては食中毒などでも知られる黄色ブドウ球菌が大多数を占めますが、咽頭扁桃炎で知られる溶連菌による場合もあります。
黄色ブドウ球菌は鼻腔粘膜、外耳道、咽頭、皮膚に常在していることがあるので、普段から鼻をほじっているお子さんは、鼻からとびひが広がったりします。また、とびひのお子さんとの接触でも発症します。
とびひはくしゃみなどでうつるものではありません。少数例ではありますが、溶連菌が起因菌の場合は痂皮性膿痂疹と呼ばれ、季節や年齢に関係なく発症します。一般的な治療としては、軽症であれば抗菌薬の軟膏を塗布します。
痒みが強ければステロイド軟膏を塗布します。症状が強い場合は内服の抗菌薬を併用します。
ただ、多くの抗菌薬に耐性がある黄色ブドウ球菌のMRSAなどが起因菌であれば、かなり治療に難を要します。夏はとくに虫刺され、汗疹、湿疹などを掻いてとびひになりやすいので、これらを早めに治療して、汗をかいたらシャワーで洗い流すなど、清潔な肌を心がけるとよいでしょう。
溶連菌感染症について
溶連菌とは病原性のある細菌のことです。
溶連菌が原因となるものとしては咽頭扁桃炎が有名ですが、他にも中耳炎、下気道炎、猩紅熱、食中毒、伝染性膿痂疹(とびひ)、蜂巣炎、丹毒、壊死性筋膜炎、感染性心内膜炎、敗血症、劇症型溶血性連鎖球、感染症などを発症することがあります。
飛沫感染で、かなり感染力が強く、家族内、学校、会社などでも容易に流行します。
溶連菌感染症の症状としては、飛沫感染後、2~5日の潜伏期間を経て発熱、咽頭痛、嘔気、腹痛などがみられます。
治療は抗菌薬の経口投与が第一選択です。
通常は適切な抗菌薬を開始して24時間経過すれば、他人への感染力はなくなるといわれています。よって、それ以降は熱もなく元気であれば隔離の必要はないでしょう。
マイコプラズマ肺炎について
マイコプラズマは飛沫感染、接触感染で伝播します。
潜伏期間は平均2~3週間で、頭痛、倦怠感、発熱、咽頭痛、咳などの感冒症状から、全身諸臓器に及ぶ多彩な肺外症状まで、幅広い病像を呈することがありますが、一般的には肺炎の病原体として知られています。
潜伏期間が長いので、家族内感染もあり、また病院、保育園、幼稚園、学校などの小集団での流行も認めることがあります。マイコプラズマ肺炎の治療は、抗菌薬を使用しますが、3~4週間くらいで自然治癒することもあります。
治療は、基本的には抗菌薬の内服です。内服困難、または重症であれば入院して注射の抗菌薬ということになります。ただしマイコプラズマ肺炎のほとんどは、内服の抗菌薬で治療ができます。
インフルエンザとその治療薬について
インフルエンザは風邪症候群のひとつですが、全身症状や高熱を伴う点が普通の風邪と違うところです。
基本的にはインフルエンザは、小児の脳炎・脳症、高齢者の肺炎、その他、中耳炎、心筋炎などの合併症がなければ、ほとんどは対症療法のみで自然治癒する疾患ですので、抗ウイルス薬を絶対に使用しないといけないわけではありません。
ただし5日間くらいは発熱が続くので、しっかり水分補給をして安静を保つ必要があります。
原則としてタミフルの使用は控えることになっています。ちなみにリレンザも、頻度は少ないですが異常言動の報告はあります。
ですから患者さんが、そのことを御理解したうえでの処方となります。
ロタウイルス性胃腸炎について
症状の程度はさまざまですが、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状を認め、特にロタウイルスは肝障害、痙攣、急性脳症(脳炎)などの合併症なども伴うことがあり、ノロウイルスに比べると重症度が高い胃腸炎を発症します。感染様式は人から人への糞口感染が主であり、1~3日間の潜伏期間を経て発症し、その後約1週間便中にウイルスは排泄されると言われています。
かなり感染力が強く、集団感染も少なくありません。
症状は軽症から重症までさまざまですが、主に嘔吐、下痢、発熱が3主徴で、さらに腹痛もみられます。下痢止め薬はウイルスが排泄されずに症状が長引くとも言われていますので、積極的には使用しません。
小児は嘔吐、下痢による脱水症状を起こしやすいため、経口摂取ができるようであれば、まずは少量の水分から与えて、嘔吐がなければ少しずつ増量します。近年は点滴よりも経口補水療法(OS-1など)が主流となっています。
ただし嘔気、嘔吐がひどく、経口摂取が困難なときには、早めに点滴のできる病院施設へ受診し、医師の診察を受けてください。
また、高度の脱水、痙攣、意識レベルの低下などを認めるものは入院の適応となります。
抗生剤について
抗生剤は細菌をやっつけるためのもので、ウイルスには全く効きません。
まれに諸症状がなかなか改善しない時、二次感染として細菌感染を合併していることがありますが、その時はお医者さんがきっと検査や抗生剤の処方をしてくれるはずです。
また一部の抗生剤は抗菌作用以外の効果もあり、症状によってはその効果を期待して処方される場合もあります。
今でも私たちは抗生剤を飲むことで安心したり、治った気になる傾向があるように感じます。
抗生剤の乱用による耐性菌の繁殖を少しでも減らすためにも医療側と患者さん側とが一緒に理解を深めていく必要があるのではないかと考えます。
熱中症について
熱中症とは高温環境下で、体温の調節機能が破綻するなどして、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、発症する障害の総称です。
熱中症は死に至る恐れのある病態ですが、適切な予防法を知っていれば防ぐことができます。
また、適切な応急処置により救命することもできます。
熱中症を疑ったときには、まず風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内などに避難させ、応答が明瞭で、意識がはっきりしているなら冷たい水を与えます。できれば塩分も適切に補えるスポーツドリンクなどがよいでしょう。そのとき意識障害や吐き気、嘔吐などがあれば、無理に口から水分を与えるのは誤嚥の原因になるので禁物です。自力で水分の摂取ができないときは、緊急で医療機関に搬送することが最優先の対処方法です。
さらに衣服を脱がせて、体から熱の放散を助けます。また状態に応じて、露出させた皮膚に水をかけて、うちわや扇風機などで扇ぐことにより体を冷やしたり、氷嚢などがあれば、それを首、脇の下、大腿の付け根、股関節部に当てて皮膚の直下を流れている血液を冷やすことも有効です。
深部体温で40℃を超えると全身痙攣、血液凝固障害などの症状も現れます。
そのときは体温の冷却はできるだけ早く行う必要があります。
重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています。
救急隊を要請したとしても、救急隊の到着前から冷却を開始することが求められます。
ちなみに小児・幼児や高齢者の方は成人と比べて熱中症のリスクは高いので、さらに注意が必要です。
熱中症は野外、室内、車内、トイレ、風呂、運動中など、場所、時間、四季をとわず起こります。
普段から熱中症予防を意識して、暑さを避ける、生活環境の改善、こまめに水分を摂るなどをしっかり心がけましょう。
アデノウイルスについて
アデノウイルスは、咽頭炎・扁桃炎・肺炎などの呼吸器疾患、咽頭結膜熱・流行性角結膜炎などの眼疾患、胃腸炎などの消火器疾患、出血性膀胱炎などの泌尿器疾患から脳症・脳炎に至るまで多彩な臨床症状を引き起こすことが知られています。
臨床症状としては、5日間くらい続く39~40度の発熱、喉の痛み、眼の充血、めやにが特徴です。
主に飛沫感染です。
感染力が強く施設内で流行することも少なくありません。予防はやはりうがいと手洗いです。
みなさんもこれからは毎日数回のうがいと手洗いをするように心がけましょう。
麻疹について
10代、20代の方で、ワクチンを小児期に接種していても有効域までの抗体上昇がなければ、症状は多少軽いことはあっても(修飾麻疹)自然感染します。
麻疹は空気感染ですので、感染力はかなり強いです。
麻疹に自然感染したら大人も子どももかなり苦しい思いをします。
予防は麻疹ウイルスのいる場所にいないこと、あとはワクチンです。
ノロウイルスについて
ノロウイルスとはウイルス性胃腸炎の原因として有名な小型球形ウイルス(SRSV)に属するノーウォークウイルスが2002年に新しく命名されたものです。胃酸に強い抵抗性があり少量で感染します。食品中では増殖せず人の腸管内で増殖します。
嘔吐物と糞便中に大量のウイルスが含まれており、とくに糞便中には数週間ウイルスが排泄されますので、かなりの感染源となります。
また嘔吐物と糞便が乾燥することでウイルスは容易に空気中にひろがりますので集団感染の原因になったりします。
感染経路はほとんどが経口感染で、生カキなどの貝類が主です。
他にも人の手指や調理器具を介して食べ物や水、氷などが汚染されて感染源になることもあります。
潜伏期間は24~48時間で、典型例としては突然の嘔吐から始まり、少し後れて下痢が始まります。
ほとんどの人が胃のあたりに差し込むような痛みを感じます。
熱も2~3日でることがありますが、とくにきついのは最初の嘔吐の時期で、そこを乗り切ればだんだんと元気になります。
下痢はだいたい3~7日間くらいで治まります。
ノロウイルスは加熱(85℃以上で1分以上)が有効とされています。
エタノールや逆性石鹸はあまり効果がなく、次亜鉛素酸ナトリウムが有効とされています。
嘔吐下痢症について
だいたい毎年12~3月くらいに多く、ノロウイルスが有名ですが他のいろいろなウイルスによっても起こるので、シーズン中に数回嘔吐下痢症にかかってしまう人もいます。
症状の経過はさまざまですが、典型的なのはまず最初に突然の嘔吐から始まり、飲んでも食べてもすぐに吐くのが2日間くらいあります。
それから嘔吐が治まってきたくらいより下痢が始まり、だいたい3~7日間くらい続きます。
熱は出たり出なかったりです。
特に小児は嘔吐下痢による脱水症状を起こしやすいので、食事よりもまずは水分をしっかり取らせなければいけません。
吐かないようにゆっくりと、一口飲ませたら5分くらいは様子をみて、大丈夫そうであればもう一口飲ませるというやり方で根気よく水分を与えましょう。
どうしても嘔吐が止まらなくて、顔色不良、尿量が少ない、泣き方が弱い、皮膚がかさかさなどを認める時は脱水症状が進行しているサインですので、大至急点滴ができる病院を受診しましょう。